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読書感想文/マーケティング/エッセイなど。基本的にフィクションです。

もしも高校時代の友人から十数年ぶりに電話がかかってきたら...|タックスヘイブン

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もしも高校時代の友人から十数年ぶりに電話が急にかかってきたら、あなたはどう思うだろうか。

僕ならネットワークビジネスの勧誘を疑う。

 

そんな警戒心の強い僕にこの小説が教えてくれることはなんだろう。

それは、法律家のチェックを受けないどのような書類にもサインしないこと。

 

そんな教訓から物語は始まる。

 

タックスへイヴン Tax Haven (幻冬舎文庫)

 

貪るように読んでしまった。

高校時代の友人と情報を追い求める旅とも言える。

インテリジェンス小説なんてジャンルがあることを知らなかった。

 

とても面白い金融犯罪ハードボイルド小説。

国際金融、租税回避を題材とした小説。

国際金融や課税制度についての知識がなくても一気読みができる作品。

洒落ていながら息苦しい。

金融サスペンス。

 

物語は主人公の携帯に、高校時代の友人から電話がかかってくるところで加速していく。

 

もしも高校時代の友人から十数年ぶりに電話が急にかかってきたら、あなたはどう思うだろうか。

 

いきなり友達から電話がかかってきたら?

そして、その友達が高校時代に気になっていた女の子と一緒に海外にいたら?

事件に巻き込まれているようなので、助けに入ったら、底なし沼の事件だったら?

もはや国家を超越するスケールが大きすぎる陰謀に、自分が巻き込まれているとしたら?

どうやって生き延びようかと必死になるだろう。

そこで主人公はこんな言葉を送る。


「だったらゲームのやり方を教えてやるよ」古波蔵は唇を歪めた。「なにが起きているかわからずおろおろする奴がいちばん最初に脱落するんだ。生き残るためにはルールを習得し、コマの配置をすべて把握して、先回りしてゲームを支配しなきゃならない。お前にできるのか?」

 

混沌とするゲームを生き延びるには、先回りして支配しなきゃならない。

 

 

東南アジア最大のタックスヘイヴンシンガポールのスイス系プライベートバンクから1000億円が消えた。日本人ファンドマネージャーは転落死、バンカーは失踪!マネーロンダリングODAマネー、原発輸出計画、北朝鮮の核開発、仕手株集団、暗躍する政治家とヤクザ…。名門銀行が絶対に知られてはならない秘密とは?そして、すべてを操る男は誰だ?

 

【書評】アウトプット大全

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読書量を増やせば「知識の湖」みたいなものが自分の中に勝手にできあがり、人としての幅や深みをもたらしてくれる。つまり、成長させてくれる、と都合よく思っていました。

 

といってもそんなにたくさん本を読んでいるわけでもないのですが、インプット量=自動的な自己成長、と解釈していたのです。

 

また、「書く」ことに小さな憧れを抱いている自分にとって、文章上達は永遠の課題でした。とはいえ、書くという行為は億劫。

読書=自動的に文章が上達する方法と自分に言い聞かせ、何かを発信する行為から逃げていました。

といってもそんなにたくさん本を読んでいるわけでもないのですが。

 

ところがどうでしょう。本書は「自己成長はアウトプットの量に比例する」と主張するではありませんか。

文章についても、「上手な文章を書くには『たくさん読んで、たくさん書く』以外の道はなし」と断言されてしまいました。

 

本書はアウトプットの重要性を、脳科学の事例を交えながら分かりやすく説いています。

アウトプット=行動と捉え、アウトプットを意識してインプットすることで自己成長が加速されることを教えてくれる本です。

 

本書を読んで、改めてアウトプットこそが情報を知識として蓄える唯一の方法だと思い知らされました。

また、インプットをする際にも、アウトプットを意識することでより深く学べるということも。

 

例えば、本を読んだらその本に関するアウトプットをする。それまで次の本は読まない。
いたずらにインプット量を増やしても、忘れてしまえば意味がないのです。

反対に、「書き出す」という作業をすれば、その瞬間の感動と脳内の状況を1枚の写真に収めるように記録に残すことができます。

 

インプットとアウトプットの比率は3:7にするべきという発見も新鮮でした。

インプットよりもアウトプットの量を意識するわけですね。

 

そして、アウトプットを仰々しいものと考えず、単なる「行動」だと思えばいい。
スキマ時間にスマホで5分程度感想をかくのも立派なアウトプット。

翌日のルーティーンに組み込むこともアウトプット。

運動をするのもアウトプット。

 

通勤時間のスマホでアウトプットを意識すれば、非常に効率的なスキマ時間の活用になります。

僕は通勤電車ではいつもパワサカを楽しんでいるのですが、明日からは次の読書感想文の構成をスマホで書いてみようと思います。

 

効率的に知識を取り込み、論理力を鍛える方法 [書評]

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新・独学術――外資系コンサルの世界で磨き抜いた合理的方法という本を読んだのでご紹介します。

 

さて、突然ですが、前職のエンジニアの方が言っていた、印象に残っている言葉があります。

「総合職(文系)の人は本当に勉強をしない。一番勉強している部類の人でさえ、ほとんど勉強していないエンジニアよりも勉強していない」

 

普段から貪欲に新しい技術を取り込み、勉強をするために早くに帰宅し、ライトニングトークなどで共有知の輪を広げようとしているエンジニアたちを間近で見ていたので、その言葉はグッと胸に刺さるものがありました。

 

もしかしたら本書の著者も、遠回しにそんなことが言いたかったのかもしれません。

 

日本のビジネスパーソンは圧倒的に学習量が足りない

全く遠回しではありませんでしたが。著書曰く、海外のプロフェッショナルと比べて日本のビジネスパーソンが明らかに劣っている点が「学習量」だそうです。

知識のインプットと論理トレーニングの量において大きな差があるとか。

 

たとえば海外のビジネススクール外資コンサルティング会社では、大量の知識のインプットと、議論を深めるための論理的思考が要求されるのに対して、日本の一般的なビジネスパーソンは彼らほどの大量のインプット、アウトプットを毎日積み重ねている人はほとんどいないのではないかと。

 

ましてや世界のエリート教育は超学歴社会になりつつあるのに、ビジネススキルの核となる「知識」と「論理」については、磨き方も含めて体系立って学ぶ機会がほとんどなく、これはやばいぞと、警鐘を鳴らしています。

 

そこで著者が提案するのは、「参考書」という効率の良いテキストを駆使して、知識と論理力を両輪で鍛えろ!という案。

 

なぜ参考書なのでしょうか。

 

「時間効率」の高い方法で取り組める

参考書を使うメリットとして、以下の3つが挙げられています。
①知識を効率的かつ網羅的に学習できる
②問題を解くことによって、正しい答えを導くスキルを身につけられる
③質が高いのに、費用が安く済む

 

たとえば経済学を学びたいと思っても、いろいろ網羅しようと思うと書籍の種類もテキストも多岐にわたってしまいます。

一方で参考書では、問題を数十問こなすだけで経済史もミクロ経済学マクロ経済学も全体像を俯瞰できます。

 

また、問題を解くことで知識が「自分のもの」になります。そして、やたらめったら書籍を買う必要がなくなるから経済的。

ということで、参考書で効率よく学習しようというのが本書の大きなメッセージです。

 

参考書が効率的だというのは分かりましたが、知識と論理力をどう効率よく取り込み、鍛えるのか。そこが問題です。

 

知識は最重要の「教養」を効率的に取り込む

知識の効率的な取り込み方として、「政治経済」と「倫理」をお勧めしています。
理由は「政治や経済の知識は、自らのビジネスを理解するベースとなり得るから」です。


方法は、問題集に答えを書き、参考書を一気に読む。そしてスキマ時間にスタディサプリを聞く。詳細は本書で丁寧に説明されています。

 

倫理は、「ビジネスマインド」を育てるのに役立つといいます。

そもそも倫理とはなんなのか?著者は「さまざまな物事の本質を学び、自ら考える糧とするもの」と定義しています。

そして大学受験の科目としての倫理は、哲学、人間心理、宗教などに関するこれまで人類が思考してきたことのエッセンス集であり、人類誕生以来の叡智と、物事の分析の仕方を学べるとのこと。

 

論理力を鍛える

著者は現代文を学ぶことで、本物の論理力が身につくと説きます。
それは、現代文は文章の意図や著者の思考を客観的に理解するための科目であり、現代文で論理力を身につけることで、自分の主張に対して、きちんと理由を述べられるようになるからです。

 

そして説明力を上げる最高のトレーニング法として、小論文を推しています。
自らの主張を、説得力を持って相手に伝えるトレーニングとして効果的と述べていますが、たしかに、僕も学生のころTOEFLの勉強で小論文を繰り返し書いていたおかげで、「論理構成」というものに触れられる機会ができたように思います。

 

まとめ

先のエンジニアの方の言葉に戻りますが、(文系の)ビジネスパーソンの学習量が足りないというのは、確かに強く否定できないなーと思っています。

 

エンジニアであれば技術力を磨くことが良いプロダクト作りにつながるので、絶えず勉強を続けられているように見えます。

それはスポーツ選手が常に体を鍛えるようなもので、ある種の必然や動機があるからこそのように思えるのです。


一方、文系ビジネスパーソンにとって勉強というのはそういった必然や動機が見えづらい類のもののような気がします。それは「仕事で成長するにはさらなる仕事」といった意識が心の奥底にあって、それがある種の真理のような共通認識として蔓延していることが起因しているのではないでしょうか。

 

仕事のご褒美は新たな仕事、という考えに則るなら、新たな仕事にありつくための近道が、圧倒的な学習量ではないかと。そしてそのための効率的な方法が、参考書を駆使した知識量と論理力の鍛錬なのではと、本書を読んで思った次第です。


とくに小論文トレーニングはすぐに効果が見えそうなので、分かった気にならず、実際にやってみたいと思います。いつか。

 

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ファイナンスアレルギーを克服したい全ての人に捧ぐ!一生モノのファイナンス入門![書評]

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一生モノのファイナンス入門という本を読んだのでご紹介します。

「数値が苦手」「決算書を前にすると目がチカチカする」「いつかはファイナンス知識をつけたいと思っているけど...」などなど。

 

そんなファイナンス/決算書アレルギーを克服できる良質な入門書です。

僕も決算書などに苦手意識を持っていたのですが、本書を読了以降、「これからは目を通してみようかな」と思えるようになりました。

 

財務諸表を読めるようになりたい!という人にとってもオススメです。

 

 それではご紹介します。

 

財務諸表がキレイに分解されていて分かりやすい

賃借対照表(BS)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(CF)、それぞれの役割がシンプルにまとめられているので、とっかかりとして非常にわかりやすかったです。

 

たとえば、決算書アレルギー患者にとって一番の悩みの種である賃借対照表。「左右のバランスが取れるようになるからバランスシート」みたいな知識は多少あったりするのですが、いかんせんどこから見始めたらいいのか分からない...

 

そんな賃借対照表も、「5つの箱」だけ押さえてしまえば楽勝!と軽々と悩みの壁を乗り越えていくのが本書の特徴です。ちなみにキャッシュフロー計算書は「3つの袋」を押さえてしまえばいいとのこと。そんな感じです。

 

賃借対照表自体は大きく「左側」と「右側」に分かれていて、左側に2、右側に3つあり、左側は資産の部で、資産には流動資産と固定資産があって...と、基本的な部分を丁寧に教えてくれています。詳細は本書を開いてみてください!

 

チェックポイントが端的にまとまっている

それぞれの「見方」が分かったはいいけど、そこからなにをどうやって分析すれば良いのかわからない...

そんな症状にも本書はきちんと救いの手を差し伸べてくれます。

 

たとえば、またまた賃借対照表ですが、それぞれの「箱」を組み合わせることで企業の状態をチェックできるのとのこと。

 

たとえば「負債」と「純資産」のバランスを確認して、純資産が占める割合が大きければ安全な企業経営の状態といえる、など。その他にもいくつかのチェックポイントを設けてくれていて、スッと頭に入ってきます。

 

具体例が示されているのでイメージしやすい

実在する企業の財務諸表の分析結果が載っているので、これまで抽象的に理解したつもりでいた内容を、実践的に学び直すことができます。

 

ネットでも手に入れることができる決算書を基にしているで、気軽にチャレンジできるところも良いです。

 

まとめ

企業分析や業界分析も、決算書を使ったほうが深く分析できることがあります。しかし、どのようにしたら良いか分からない。ので、無意識のうちに決算書から距離を取り、次第に苦手意識を抱いていく...

 

「分からない」が決算書アレルギーの正体だったのですが、それがこの本のおかげで(少しは)克服できたような気がします。

 

本書はただ単に決算書の読み方が分かるようになるための本ではなく、「ファイナンス視点」で世の中が見られるようになることが本書の最大の魅力です。

 

今回はあまりそこらへんに触れられませんでしたが、むしろそここそが本書の一番大事なメッセージですので、是非とも手にとって読んでみてください。

 

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2016年の振り返りと新年の抱負

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あまり個人的なことを公にする趣味はないのだが、このところ自分の発信のありかたに思うところがあり、来年はもっと自分を晒していこうと自戒の念を込めて、個人的なことでしかない「1年の振り返り」を綴ろうと思う。


発信のありかたというと大げさに聞こえるかもしれない。自分の性格とも言おうか。
基本的に僕は自分にあまり自信がなく、つまるところ自分の文章を人様の眼前にさらすのには抵抗があるタイプだ。


「自分に自信を持ちましょう」というのは簡単だが、どうにも気恥ずかしさや気後れが先行してしまっていた。


そんな僕が2016年の大きな発見をひとつあげるとしたら、「自信」というものを自分なりに咀嚼できたことなのかもしれない。


自信というのは、恥ずかしい部分をさらけだしても、まぁいいかと思える強さなんだと思えるようになったのだ。
この発想の転換によって、これまで輪郭のつかめないおぼろげな概念でしかなかった「自信」の正体に正面から向き合うことができた。


前置きが長くなってしまったが、2017年は「恥ずかしい部分をさらけだしても、まあいいか」と思いながら過ごしていきたいと思う。


そんなきっかけをつかめた今年の振り返りまとめを、それぞれ印象に残った3冊の本とともに。

 

1月〜3月

印象に残った本の抜粋

やっていたこと

この時期は『おとなの教養』に触発されて、リベラルアーツを自分なりに学んでみようと思っていた。

宗教、宇宙、人類の旅路、人間と病気、経済学、歴史、日本と日本人の7分野に関する本を毎月読もうとする試みだ。


結局、1月だけで終わってしまったが。


仕事の面では、ゲームアプリの北米マーケティングをやっていたので、カスタマージャーニーマップを整理しようとしたり、ユーザーのアクセスポイントとなるチャンネルの一覧を洗い出したり、メディアプランつくったりと色々と試行錯誤していた時期だった。

北米のクリエイティブエージェンシーとクリエイティブに関する調整や交渉を喧々諤々とおこなっていたのもこの時期。


この時期に宣伝会議のカスタマージャーニーマップのワークショップに参加して、尊敬する方とも出会えた。


2月にNYに出張にいって凍え死にそうになったのは良い思い出。


プライベートでは仙台へ旅行に行き、ここでも凍えていた。

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4月〜6月

印象に残った本の抜粋

  • 『たった一人の熱狂』 見城 徹
  • 『A New Brand World: Eight Principles for Achieving Brand Leadership in the Twenty-First Century』 Scott Bedbury
  • ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』 入山 章栄

やっていたこと

映画『SpotLight』にやたらと感動した。身につまされたのは出版する雑誌が印刷されて出荷される様子を、記者たちが車の中からじっと見つめているシーン。あぁ、そこまでやるのか、と感心したのだ。神は細部に宿るというが、自分が担った仕事を最後の最後まで見届けて、ディテールにこだわってこそ優れた成果が生まれるのだと、胸が痛くなった。


仕事では頑張ってRequest For Proposalの資料をつくったり、素晴らしいパートナー企業と出会えたり、NYとLAに出張したりとと充実した時期だった。

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プライベートでは那須高原、熱海、江ノ島へ旅行をした。振り返ると月に1回のペースで旅行に行っていたことになる。

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7月〜9月

印象に残った本の抜粋

  • 『最強の働き方;世界中の上司に怒られ、凄すぎる部下・同僚に学んだ77の教訓』 ムーギー・キム
  • 村上海賊の娘』 和田 竜
  • 『実戦マーケティング思考 「論理思考&イメージ発想」スキルを鍛える7つのツール』 佐藤 義典

やっていたこと

LAのクリエイティブエージェンシーが来日したのでそのアテンドをしたことが最も記憶に残る。ここで議論した(主にマーケティングに関する)内容というのはすごく勉強になったし、自分の資産にもなっている。


また、特別なご縁でAd:tech Tokyo International及びAd:tech Tokyoのパネルディスカッションに登壇させてもらった。いずれも貴重な経験で、広告・マーケティングに関する知識と経験が飛躍的に伸びた時期である。


謎のジュースを自分で作ろうとしていた時期でもあった。食品衛生責任者の資格も取り、真剣に取り組んでいた。


プライベートでは軽井沢へ旅行にいき、親友の結婚式で北海道へ飛び、銀座の鰤門(しもん)で食べた寿司に心の底から感動した。

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10月〜12月

印象に残った本の抜粋

  • 『日本スターバックス物語──はじめて明かされる個性派集団の挑戦』 梅本龍夫
  • スターバックス成功物語』 ハワード シュルツ
  • 『女のいない男たち』 村上 春樹

やっていたこと

最も大きな出来事としては、北米のマーケティングの支援業務に区切りをつけて、自分たちで立ち上げた会社に戻ってきたことだろう。最後の出張としてLAに飛び、パートナー企業に挨拶をしたときはなかなか感慨深いものがあった。


この時期はどこか現在進行形的なところがあるので、なにかをやった、というよりは、やっているといった印象が強い。人事的な働きをしようと試みたり、メディアを成長させようとしたり、まだ志半ばだ。会社で草津に旅行にいったりもした。


プライベートでは四国へ旅行にいった。

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こうして振り返ってみると、月に1度のペースで遠出していることが分かる。充実していて良いことではあるが、どうりでお金が貯まらないはずだ。来年は海外にでもいこうかしら。


さて、2017年はどのような年にしようか。


基本的な姿勢は「恥ずかしい部分をさらけだしてもまぁいいか」と思うこと。また、その精神を保ちながら意欲的に発信をしていきたいと思う。


同時に、コミュニケーション能力も高めていきたいと思う。今年はどこか人との会話が億劫に感じられるケースが多かったので、考え方を変えて、その人の面白い部分を引き出せるような会話を心がけられるように気をつけたい。

 

まとめると、2016年は割と充実した年だったということと、2017年は発信力とコミュニケーション能力を磨いていきたいということ。


来年もどうぞよろしくお願いします。

聴く能力を高める5つの方法

聴くという能力が失われている。


この主張には個人的に思い当たる節が多々ある。僕自身はもちろん、周囲の態度も含めて。
聴く — すなわち、受動的に漫然と聞くのではなく、積極的に意識して耳を傾ける。この態度、ひいては能力が失われているという主張は、多くの人々に共有される問題意識であるように思う。


そんなことを漠然と考えていた折に、たまたま見つけた『5 ways to listen better』と題されたTEDの動画が興味深かったので、内容を掻い摘んで紹介したい。


5 Ways to Listen Better

https://www.ted.com/talks/julian_treasure_5_ways_to_listen_better#t-34418

 

端的に要約すると、意識的に聴こうと耳を傾けるその姿勢によってこそ、物理的にも精神的にも様々な人やモノと深く繋がれるというのがこの動画のメインメッセージである。
聴き上手になるためにはどうすれば良いのか — 解となる方法論を求めて見始めた動画だったが、そんな小手先のテクニックではなく、まずは姿勢を正しましょうと、自省を促されたように感じた。


スピーカーのJulian Treasureは音を専門に研究する”Sound Consultant”。
彼のプレゼンは「聴くという能力が失われている」という主張から始まる。曰く、我々は会話の60%を聞くという行為に充てるのだが、実のところ頭に残るのは聞いたうちの25%しかないという。


Julianは聴く行為(Listening)を「音に意味を持たせる」と定義した上で、我々が普段、無意識におこなっているいくつかの心理的テクニックを紹介してくれた。
これらは情報を抽出するためのテクニックである。例えば雑多な喧騒の中でも自分の名前を呼ばれると思わず反応してしまったり、不協和音が聞こえると耳を背ける、など。
こういったテクニックは実際のところ我々が何に意識を向けているか教えてくれるという。そして、意識を向けているものに意識的になることは非常に重要で、意識こそが「聴く」行為にとって大事な「音」になる。


その聴く能力を我々は失っているという。なぜか。
一つの理由は、人類が記録する方法を発明したからであるとJulianは説く。ライティング、録音、録画。故に、正確に慎重に聴くという行為が消えてしまった、と。
また我々は日常的に、視覚的にも聴覚的にもあらゆるノイズに埋め尽くされているため、耳が疲れてしまっている面もあるらしい。


聴く能力が失われると、相手を本当の意味で理解しようとしなくなる。すると、世の中は平和からは程遠い世界になってしまうのではないか。
一方で、意識的に聴こうとすれば、話者と聞き手に深い理解が生まれる。理解が深まれば、つながりも当然深くなる。


聴く能力を高めるために、ここでは本題の5つの方法を抜粋する。これらを駆使すると意識的に聴く能力(以下、Conscious Listening)の質を高められるという。

 

  1. Silence (静寂)
    1日3分の静寂を設ける。
    これだけで耳はチューニングされ、リセットされる。完全な無音状態を作るのが難しければ、静かな環境でも構わない。

  2. Mixer (ミキサー)
    様々な音が混じり合う環境の中で、音を探してみる。
    例えばカフェの中。どのような音を探し出せるかトライしてみるのもいいだろう。単一の音源がいくつあるのか、聞き分けてみてほしい。
    湖でもいい — 鳴いている鳥を数えてみる。鳥はどこにいるか?湖のさざ波はどこでたっているのか?
    これはConsicous Listeningの質を高めてくれる効果的なエクササイズだ。

  3. Savoring (鑑賞)
    ありきたりな音を楽しむ。
    例えば乾燥機の音。注意深く聴けば、乾燥機の唸る音が一定のリズムを刻んでいることがわかる。Julianはこれを1, 2, 3のリズムと捉え、ワルツのようだと表現した。
    このように、身の回りにある音に意味を見出そうとしてみることがこのエクササイズの肝になる。隠れている聖歌隊を探すような行為なので、Julianは「Hidden Choir」と呼んでいた。

  4. Listening Position(聴く位置)
    視点(ポジション)を変えて話を聴く。
    聴き取る対象に合わせて一番適切な場所にポジションを移動させる。
    人が話を聞く時、無意識に様々なフィルターが働いている。文化、言語、価値観、信念、態度、期待、意図など様々だ。
    このフィルターを意識的に利用して、話を聞いてみようというのがこのエクササイズの趣旨だ。

  5. RASA
    最後は頭文字を取ったエクササイズで、コミュニケーションとリスニングに利用出来る。
    Receive:話者の話を注意深く聴くこと
    Appreciate:「うん」「わかった」と意思表明をすること
    Summarize:意思疎通において要約することは大切
    Ask:質問すること

聴く能力が失われるというのは、真剣な問題だとJulianは言う。先述の通り、Conscious Listeningは話し手と聞き手の深い理解につながるからだ。Conscious Listeningは相互理解を生む。相互理解なしでは、お互いがお互いに耳を貸さない、暴力的で恐ろしい世界になる危険がある。
反対に、Conscious Listeningの質を高めれば、相互理解から平和な世界になる可能性がある。
上記の5つのエクササイズはその世界をつくる手助けをしてくれるはずだし、個人的に広める価値があると思ったので、久しぶりにブログを書いてみた。

オスマン帝国の復興

『大世界史』を読んで

世界史を学ぶことで、これまで点在していた各国の今の動きが、線で結ばれた気がした。

『大世界史』の本の趣旨はまさにそこで、起きている事象の背景、つまり歴史を理解することで、現在の立ち位置を正しく把握する。そして、流れの中で事象を捉えられるので、今後の動きをある程度予測することができるのだ。

トルコ、イラン、ロシア、中国など、かつて帝国だった国々が、現代の時代において帝国復興の動きをみせていることがとても興味深かった。
特にオスマン帝国の復興を企む、トルコのエルドアン大統領。自身の権威主義的な動きへのクーデターを恐れ、すべての食べ物を毒味させているという。
個人的に非常に興味が湧いたので、オスマン帝国の歴史を調べてみることにした。
当然、周辺の中東世界やイスラムの歴史も重要なファクターになってくるので、併せて調べてみた。本記事では特定の箇所を深堀りすることはせず、全体の要素が、それぞれどうつながっているかに重きをおくようにしてみた。

なお、調べてみたものは大きく以下の4つ。
オスマン帝国の歴史
・今日のトルコの動き
イスラムの歴史(主にスンニ派とシーア派の違い、カリフ制度)
・中東のキープレイヤーたち

オスマン帝国の歴史

オスマン帝国を一言でいうと、1299年から1922年までの約600年間君臨した「イスラム教スンニ派の大帝国」。スンニ派については後述するが、重要なのは、「イスラム教の帝国」だったということ。
支配層は主にテュルク系の人々。テュルク=Turk、つまりTurkey(トルコ)である。領内にはアラブ人、エジプト人、ギリシア人、スラヴ人ユダヤ人など、多数の民族から形成される複合的な多民族国家だった。

オスマン=ベイという人物が建てたから、オスマン帝国。元々はアナトリアという小アジア(地中海と黒海に囲まれた半島)に現れたトルコ人の遊牧民族の軍事的な集団が、オスマン帝国の起源とされている。そしてこの遊牧民族長こそが、オスマン=ベイであった。
オスマン=ベイはビザンツ帝国の弱体化に乗じて、独立させたアナトリア内の小国家の領土を拡大していった。

17世紀の最大版図における支配地域は、東西はアゼルバイジャンからモロッコに至り、南北はイエメンからウクライナハンガリーチェコスロヴァキアに至る広大な領域に及んだ。(http://goo.gl/maps/qOzm

この広大な支配地域こそがオスマン帝国の凄さのひとつ。東ローマ帝国などの東ヨーロッパキリスト教諸国、西アジア北アフリカイスラム教諸国を征服して地中海世界の過半を覆い尽くしていたのだ。

そして最も驚異的な点が、これだけ大きな領土の中に、いくつもの異なる宗教や民族が存在したにも関わらず、共存が成立していたということだ。オスマン帝国自体はイスラム教だったが、ギリシア正教アルメニア教会・ユダヤ教などの非ムスリムに対して改宗を強制しない、寛容な帝国だった。宗教的集団を基本的な統治の単位としていた。これをミレットというらしい。

また、皇帝を意味する「スルタン」が、イスラム教の最高指導者の称号である「カリフ」を兼ねるようになってしまったのも驚きだ。本来、カリフになれるのはアラブ人の「クライシュ族」という、預言者ムハンマドの一族だけ。ところがオスマン帝国をつくったトルコ人はその考えを覆し、スルタンがカリフを名乗った。これはアラブ諸国に衝撃を与えたが、それほどまでにオスマン帝国イスラム世界において支配的な存在であったことがうかがえる。

今日のトルコの動き

オスマン帝国が今日のトルコにどうつながっているか。近代トルコの父はムスタファ・ケマル・アタチュルクという人物。第一次世界大戦オスマン帝国が崩壊し、オスマン帝国軍の将校だったアタチュルクがスルタン制を廃止して、トルコ共和国を建国した。
トルコの近代は、一言でいえば「軍によって推し進められた近代化」。トルコの軍は、アタチュルクに心服して、「政教分離」の原則を絶対に守ろうとする。
現トルコ大統領のエルドアンは、この政教分離に反して、トルコのイスラム原理主義国家化を推し進めようとしている。彼のこの権威主義的な動きが、前述のクーデターへの恐れにつながっているのだ。なぜか。エルドアンには、カリフになろうとしている疑いがある。

カリフとは。シーア派、スンニ派とは

ムハンマドが亡くなった後、信者たちは集団の中で一番信頼できる人物を後継者として選んだ。これを「カリフ」という。カリフとは、預言者の代理人、という意味である。ちなみに、預言者とは未来を予言する人ではなく、神の言葉を預かった人、という意味で預言者と呼ばれいてる。

このカリフを巡って、シーア派とスンニ派は袂を分かった。2代目カリフ、3代目カリフと続いていく中で、「アリー」という人物をカリフに推す人たちが現れる。彼らは「ムハンマドの血筋を引く者こそがカリフにふさわしい」と考え、その後、アリーの息子たちに付き従うようになる。この人たちを、シーア派と呼ぶ。
一方、血筋に関係なく、コーランハディースムハンマドの言行録)に書いてあることや、イスラムの慣習(これをスンナという)を守っていくことが大事だ、と考える人たちは、別のカリフを選ぶ。この人たちがスンニ派と呼ばれる。
乱暴に言ってしまうと、「誰がイスラム共同体を率いていくのか」という問題に端を発して、シーア派とスンニ派は分裂した。シーア派は「カリフはムハンマドの子孫であるべき」と主張し、スンニ派は「話し合いによって選ばれたものがカリフとなるべき」と主張した。

シーア派とスンニ派だが、断食、巡礼、礼拝などの方法に違いはほとんどない。あるとすれば、シーア派では殉死したフセインを追悼するために、アーシュラーと呼ばれる宗教行事があったり、シーア派の聖人の墓を詣でるといった習慣が見られる程度だ。基本的にイスラム教徒でない限り、基本的に外見や行動からシーア派とスンニ派を区別することは難しい。

それでは、同じイスラム教徒なのに、なぜ今日においても、シーア派とスンニ派は対立しているのか。僕はキリスト教なので、てっきりプロテスタントカトリックの様な違いを想像していた。しかし、宗教的な対立だけでは、今日の争いの原因を説明できない。
イランにおいてのみ、シーア派が政権をとり国家を運営しているが、それ以外の地域(バーレーンアゼルバイジャン、シリア、レバノン、湾岸諸国、イエメン、アフガニスタンなど)で政権を握っているのはずっとスンニ派だった。
シーア派は政治的には少数派。経済的・政治的に劣勢に立たされている現状を打破するために、団結して反政府活動をおこなっているシーア派を、スンニ派政権は驚異とみている。

また、なぜかシーア派の人たちは石油資源が豊富なところに大勢いる。この石油のためにスンニ派とシーア派の対立が生まれやすくなっていることも関係していると言えるだろう。単純な宗教対立ではなく、「この土地は誰のものか」「この石油は誰のものか」という争いが、対立の本質を表している。

中東のキープレイヤーたち

アラビア語を使うスンニ派アラブ諸国
ペルシャ語を話すシーア派のイラン
アラビア語を話すシーア派のアラブ人
スンニ派だが、トルコ語を話し、民族意識も強いトルコ(大世界史 p.32)
つまり、
宗派「スンニ派 or シーア派」、
言語「アラビア語 or ペルシャ語 or トルコ語」、
国「アラブ諸国 or イラン or トルコ
のいずれかに分類される。

アラブの春」以降、アラブ世界は分裂と混乱が広がっている。これに乗じて、非アラブのイランとトルコが、帝国として自らの影響力を拡大するチャンスと思い始め、拡張主義的政策を取っている。
イランには「ペルシャ帝国」、トルコには「オスマン帝国」としての記憶がある。最近の核協議に代表されるようなイランの動きや、100以上ものモスクを建設して、露骨にイスラム化政策を進めるトルコを見ていると、冒頭にあったように、帝国復興の動きがあることが分かる。

行動科学で明らかになっているように、人の行動には動機が因果関係として存在している。動機があってこそ、人は動く。動機は思想や宗教、歴史、イデオロギーなど、様々だ。だからこそ、過去にどういった歴史があったかを勉強すると、現在のニュースが立体的に浮かび上がってくる。
それこそが本書を読んだ一番の収穫だった。

※出典
池上彰佐藤優(2015) 『大世界史 現代を生きぬく最強の教科書』 文春新書.
世界史の窓 「オスマン帝国」 <
http://www.y-history.net/appendix/wh0803-009_1.html#wh0803-009_0 > 2015年12月12日アクセス
academyhills(2012)「池上彰が紐解く、アラブの今と未来」<
http://www.academyhills.com/note/opinion/12091004ArabIkegami.html > 2015年12月12日アクセス
岩永尚子(2014)「教えて! 尚子先生 イスラム教・スンニ派とシーア派の違いは何ですか?」 <
http://diamond.jp/articles/-/55770?page=2 > 2015年12月12日アクセス