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読書感想文/マーケティング/エッセイなど。基本的にフィクションです。

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

【短編小説】目に見えない③

◆3章◆ 「小澤くん、強引だね」リサは呆気に取られたように言った。 「いつもあんな感じだよ」たまに、誘拐なんじゃないのかと思ってしまう。 「マユコ、ヤられちゃうのかな」 「たぶん、ホテルの部屋についたら、小澤は暖房を入れると思う」 「こんな暑い、…

【短編小説】目に見えない②

◆2章◆ 小澤は僕と同い年で、つまり25歳で、大学時代からの友人だ。この粗野で我侭で、強引な男とどこで馬が合ったかわからないが、大学を卒業して社会人3年目となった今でも、たまにこうして顔を合わせている。 僕は紙ナプキンで口元を抑えながら、小澤…

【短編小説】目に見えない①

◆1章◆ 「フェラをした直後にキスをせがんでくる女の神経が理解できない」 小澤はほとんど残っていないアイスコーヒーの底を、ストローでズーズー吸い上げながら言った。子鹿のようにつぶらな冷たい瞳で、こちらを上目遣いに見てくる。 僕は小澤の下衆な発言…

【書評】ティファニーで朝食を(トルーマン・カポーティ)

あらすじ 第二次戦下のニューヨークで、居並ぶセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜明けに鳴らしたのは他なら…

青春小説の金字塔!【書評】横道世之介 (吉田修一)

概要(あらすじ) 大学進学のため長崎から上京した横路世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。友の結婚に出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い・・・。誰の人生にも温かな光を灯す、…

【書評】サラの柔らかな香車 (橋本長道)

感想 第24回小説すばる新人賞受賞作。 第23回受賞作の『国道沿いのファミレス』読了後にも思ったが、 朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』と同じ賞を受賞したレベルにある作品とは思えない。 天才、才能とは何か。壮大なテーマを求める姿勢は面白かった…