2014-01-01から1年間の記事一覧
「どうしたら良いと思う?」 下北沢のファミレスのボックス席で、僕は小澤に尋ねた。「なにを?」「だから、リサの浮気に対して、僕はどうすればいいのかな」「どうもこうも、許してもらったんだから、もう良いんじゃねーのか?」小澤は面倒くさそうに言った…
「で、浮気していた証拠とか、あるのかよ?」 小澤がストローの先端を噛みながら聞いてきた。グラスの中は空っぽで、アイスコーヒーの氷もなくなっていた。口の寂しさを持て余していた小澤はストローをしきりに噛んでいた。 下北沢にあるファミレスのボック…
◆3章◆ 「小澤くん、強引だね」リサは呆気に取られたように言った。 「いつもあんな感じだよ」たまに、誘拐なんじゃないのかと思ってしまう。 「マユコ、ヤられちゃうのかな」 「たぶん、ホテルの部屋についたら、小澤は暖房を入れると思う」 「こんな暑い、…
◆2章◆ 小澤は僕と同い年で、つまり25歳で、大学時代からの友人だ。この粗野で我侭で、強引な男とどこで馬が合ったかわからないが、大学を卒業して社会人3年目となった今でも、たまにこうして顔を合わせている。 僕は紙ナプキンで口元を抑えながら、小澤…
◆1章◆ 「フェラをした直後にキスをせがんでくる女の神経が理解できない」 小澤はほとんど残っていないアイスコーヒーの底を、ストローでズーズー吸い上げながら言った。子鹿のようにつぶらな冷たい瞳で、こちらを上目遣いに見てくる。 僕は小澤の下衆な発言…
あらすじ 第二次戦下のニューヨークで、居並ぶセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。気まぐれで可憐、そして天真爛漫な階下の住人に近づきたい、駆け出し小説家の僕の部屋の呼び鈴を、夜明けに鳴らしたのは他なら…
概要(あらすじ) 大学進学のため長崎から上京した横路世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。友の結婚に出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い・・・。誰の人生にも温かな光を灯す、…
感想 第24回小説すばる新人賞受賞作。 第23回受賞作の『国道沿いのファミレス』読了後にも思ったが、 朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』と同じ賞を受賞したレベルにある作品とは思えない。 天才、才能とは何か。壮大なテーマを求める姿勢は面白かった…
概要 古代の北ヨーロッパ・ゲルマン世界で育まれた神々の物語は、 アイスランドで『エッダ』『サガ』として豊かに保存され、 欧州各地の数々の文学作品の礎となった。 北欧神話と僕 ロードオブザリングが一番有名だろうか。 北欧神話は数々の映画やゲーム、…
あらすじ 星野一彦の最後の願いは何者かに<あのバス>で連れていかれる前に、 五人の恋人たちに別れを告げること。 そんな彼の見張り役は「常識」「愛想」「悩み」「色気」「上品」ー これらの単語を黒く塗り潰したマイ辞書を持つ粗暴な大女、繭美。 なんと…
概要(あらすじ) 米軍基地の町・福生のハウスには、 音楽に彩られながらドラッグとセックスと嬌声が満ちている。 そんな退廃の日比の向こうには、空虚さを超えた希望がきらめくー。 感想 福生のハウスとは、福生市にある米空軍横田基地周辺にあった(元)米…
繋がってるね、とは、mixiの昔のCMの印象的なセリフで、 数年後にLINEが同じ趣向のCMを打ったけれどもオレンジのそれほどには印象に残らなかった。 あくまで個人的な印象に過ぎないが。 1対1のメッセージで繋がることより、1対Nで繋がることの難しさを人々は…
早起きがしたいです。でも、結局今朝も起きられず。起きようと頑張るのですが、うんうんと唸るだけでアマレスラーもびっくりするくらい布団の上で寝返りをうって終わるだけ。 「もう、起きなきゃでしょー」と布団越しに体を揺すって起こしてくれる石原さとみ…
-------------- 関係のさめてきた恋人と同棲しながら、遊び人の医者と時々逢いびき。仕事は順調、でも何かが足りない――29歳、京都在住のイラストレーター神名葵。彼女の日常に七年ぶりに舞い戻ってきた、大学時代の先輩ハセオ。互いに恋人がいても、なぜかい…
------------- トマトを欲しながら死んでいった労務者から預かった、一通の手紙の行末。(巻末より) ------------- メタファーって便利で、本当に伝えたい事を表現できるときがある。直裁的に対象を詳細に説明するよりも、あえて視点を対象から外す事で読み…